
優れたカバーレターは論文のために宣伝活動を行う機会をもたらします。
このレターは決して形式的なものではなく、本文と同様に(それ以上ではないにしても)慎重に書く必要があります。
カバーレターは論文を投稿先のかどうかの編集者の決定を左右するために書くものです。カバーレターは論文が論文を送る学術雑誌にふさわしいことを主張し、最も重要な研究結果を強調します。
また、あなたの論文を発表するという決断に影響を及ぼすような利益相反が存在しないことを編集者に保証する必要もあります。
最終的に、カバーレターは、編集者にあなたの論文に関心をもたせて注意深く読んでもらい、査読に回す論文として選んでもらうよう仕向けるものでなければなりません。
優れた科学論文はカバーレターの内容にかかわらず審査される場合もありますが、自分の研究を目立たせたいと願う科学者の大半にとっては、カバーレターを上手に利用することが得策です。
目次
Cover letterのサンプル
カバーレターの構成
カバーレターは標準的なビジネスレターと同様に書く必要があります。
名前が分かっている場合には、編集者を礼儀正しく名前で呼びかけましょう。そして自分の連絡先を含めましょう。
あなたの連絡先はおそらく学術雑誌のオンライン提出システムでも検索できますが、カバーレターにも記述するのが適切です。
論文の題名と著者の名前を記載したパラグラフからカバーレターを書き始めます。提出する論文のタイプ(研究論文、レビュー、事例スタデ ィなど)を説明することもできます。
この最初のパラグラフと次のパラグラフで、研究の根拠と主な研究結果を記述しましょう。直接関係がある場合には、過去に発表した論文を引用すること もできます。
次に、自分の論文が学術雑誌にふさわしい理由を説明する短いパラグラフを書きます。「該当分野において興味深い」または「新型の」などとだけ記述することは避けてください。
学術雑誌のAims & Scope(基本方針)の具体的な側面に対処しましょう。学術雑誌が臨床的応用の研究に注目している場合、あなたの研究の臨床上の意義における重要性を必ず強調してください。
学術雑誌がナノ構造材料に注目していると言っている場合は、あなたの研究がこのような材料にいかに関与しているかを説明します。
あなたの研究が学術雑誌に完全に適していない場合でも、Aims & Scope(基本方針)に必ず言及し、 あなたの論文が読者にとって興味深いものとなる理由を説明することができます。
最後は以下を表わす簡潔なパラグラフでカバーレターを締めくくります。
- 論文がオリジナルのものであること(つまり、あなたが書いたものであり、コピーしたもので はないこと)
- 論文のいかなる部分も以前に発表されておらず、他の学術雑誌での発表が予定されていないこと
- 発表に対していかなる利益相反も存在しないこと
- 予定レビュアーを挙げる(学術雑誌から求められた場合のみ)
- あなたの論文を審査すべきでない研究者を列挙する
その他のアドバイス
- カバ-レターではアブストラクトや序論よりも 多少おおげさに誇張した表現を使うことができ ます。編集者の目をひきましょう!
- このレターを使って、あなたの論文の主な内容 を強調し、なぜあなたの論文が雑誌の読者にと って興味深いものであるかを語りましょう
- カバーレターを利用して他の研究者のことを悪 く言ったり、研究者間の駆引きに利用したりす ることは避けてください。自分の研究の強み、 なぜ論文が他の人にとって興味深いかという理 由に焦点を絞ります。
- カバーレターによって、すぐに却下される か、査読に回されるかの違いを生み出すこ とができます。時間をかけてカバーレター を書き、提出する前に同僚に読んでもらい ましょう。学術雑誌の名前や固有名詞はイ タリック体で書くようにしてください。
- よく見られる過ちとしては、関係のない素 材(関連性のない過去の研究を引用するな ど)や焦点からはずれた内容(サンプルサ イズや有意確率を列挙するなど)を取り上 げる、情報を繰り返し記述するなどがあり ます。
カバーレターの構成要素
カバーレターを作成する上で重要なのは、一にも二にもターゲットジャーナルの “Guide for Authors”の遵守です。常にエディターの要求事項を最優先しなくてはなりません。必須事項を守れていなければ、どれだけ一生懸命アピールしても無駄になってしまうからです。
以下でジャーナルカバーレターの記載事項として一般的なものと、作成上の注意点を挙げておきます
必須記載事項:
- エディター氏名 (分かっている場合)
- 投稿しようとするジャーナル
- 論文タイトル
- 論文の種類 (レビュー論文、研究論文、ケーススタディなど)
- 投稿日
- 研究の背景と研究テーマ
- 使用した研究方法の概要
- 主要な研究結果とその重要性 (自分の研究結果がその分野の知識をどのように発展させられるのか)
- 著者の連絡先
- その論文は今までジャーナルに記載されたことがなく、現在審査中にもないということ
- その論文のすべての共著者・共同研究者が論文の投稿に同意しているということ
その他一般的に含まれる内容:
- 専門用語や略語を濫用しない
- 研究結果やその重要性を誇張しない。“novel,” “first ever,” や “paradigm-changing”のような非科学的な表現の使用は避けること。このようなフレーズはかえって偏向性を強調するだけであり、研究者としての冷静かつ客観的な視点の欠如と見做される。(こちらの記事を参考: 11 steps to structuring a science paper editors will take seriously (elsevier))
- 支持者の名前を羅列しない。自分の論文を支持する人々の名前を列挙しても、エディターの関心を引くことはできない。論文や自分の名声よりも、その論文がジャーナルのカバーする範囲と性格に合致していることをアピールすることが最も重要。
- 小説のように書かない。分量は1ページまでとし、カバーレターは論文を簡潔に紹介することに主目的があることを忘れない。
- ユーモアを使いすぎない。ジャーナルエディターの関心を引こうとしているうちに、カバーレター本来の目的から外れたものとなってしまう危険性が高いため。
ジャーナルカバーレター書式
[エディター氏名][大学院学位(ある場合)]TIP: 受信者の名前と学位を記載するのが一般的です。例: John Smith, MD or Carolyn Daniels, MPH[肩書き]例: Editor-in-Chief, Managing Editor, Co-Editors-in-Chief[ジャーナル名][ジャーナルの住所]
[投稿年月日]
Dear Dr./Mr./Ms. [エディターの苗字]:
TIP: エディターの名前が分からない場合は “Dear Managing Editor:” や “Dear Editor-in-Chief:”のようにターゲットジャーナルで使用されている肩書きを使用します。でも可能な限りはエディターの名前を使用するようにしたいものです。ジャーナルのウェブサイトの情報は古い可能性があるので、確実でない場合は該当ジャーナルに連絡し、カバーレターの宛名をどうすればいいか確認するのが良いでしょう。
TIP: 格式高いビジネス文書では“Ms.”を使用します。“Mrs.” や “Miss”を使用してはいけません。
TIP: 絶対に”Dear Sirs”のような表現を使用してはいけません。ジャーナルエディターは女性である場合が多く、このような表現は侮辱として受け止められるからです。
[段落 1: 2–3 文で] I am writing to submit our manuscript entitled, [“タイトル”] for consideration as a [ジャーナル名][論文タイプ]. [研究デザイン、研究テーマ、主要研究結果および結論を要約した1-2文]
例: I am writing to submit our manuscript entitled, “X Marks the Spot” for consideration as an Awesome Science Journal research article. We examined the efficacy of using X factors as indicators for depression in Y subjects in Z regions through a 12-month prospective cohort study and can confirm that monitoring the levels of X is critical to identifying the onset of depression, regardless of geographical influences.
TIP: 研究結果と結論について述べる際に使える英語表現:
- Our findings confirm that…
- We have determined that…
- Our results suggest…
- We found that…
- We illustrate…
- Our findings reveal…
- Our study clarifies…
- Our research corroborates…
- Our results establish…
- Our work substantiates…
[段落 2: 2–5 文で] Given that [その研究を始めた背景], we believe that the findings presented in our paper will appeal to the [ジャーナルの読者層] who subscribe to [ジャーナル名]. Our findings will allow your readers to [(自分の論文に合ったジャーナルの目的とテーマ)].
TIP: 自らの研究が該当分野におけるジャーナル読者の知識にどのように貢献できるのか把握し、的確な内容でアピールすることが大切です。例えば、ターゲットジャーナル読者層は学界での研究結果が実際の公共政策に及ぼす影響について関心が高いと分かっている場合は、自分の研究から導き出された結論が実社会のイシューを解決するための政策を立てていく上でどう役立つのかということに焦点を当てて論じると効果的でしょう。
TIP: 研究を行う理由についての記述を、研究の背景とします。
例: “Given the struggle policymakers have had to define proper criteria to diagnose the onset of depression in teenagers, we felt compelled to identify a cost-effective and universal methodology that local school administrators can use to screen students.”
TIP: 自分の研究が先行研究の影響を受けている場合はそのことに言及します。記述例: “After initially researching X, Y approached us to conduct a follow-up study that examined Z. While pursuing this project, we discovered [論文投稿によって同分野の研究者と共有したいと思った新しい発見事項]“
例: Given the alarming increase in depression rates among teenagers and the lack of any uniform practical tests for screening students, we believe that the findings presented in our paper will appeal to education policymakers who subscribe to The Journal of Education. Although prior research has identified a few methods that could be used in depression screening, such as X and Y, the applications developed from those findings have been cost-prohibitive and difficult to administer on a national level. Thus, our findings will allow your readers to understand the factors involved in identifying the onset of depression in teenagers better and develop more cost-effective screening procedures that can be employed nationally. In so doing, we hope that our research advances the toolset needed to combat the concerns preoccupying the minds of many school administrators.
[段落 3: 先行・類似研究] “This manuscript expands on the prior research conducted and published by [論文著者] in [ジャーナル名]” または “This paper [examines a different aspect of]/ [takes a different approach to] the issues explored in the following papers also published by [ジャーナル名].”
- 研究 1
- 研究 2
- 研究 3…
TIP: ターゲットジャーナルに掲載された類似研究があればそれについて必ず言及するようにしますが、その数は5個以下とします。一つの論文についてのみ触れる場合は、前の文章を“This paper [examines a different aspect of]/ [takes a different approach to] the issues explored by [著者] in [論文タイトル], also published by [ジャーナル名] on [日付]”とします。
[段落 4: よく追加されるフレーズ] Each of the authors confirms that this manuscript has not been previously published and is not currently under consideration by any other journal. Additionally, all of the authors have approved the contents of this paper and have agreed to the [ジャーナル名]‘s submission policies.
TIP: 以前に研究の一部を公開・共有したことがある場合はそのことについて記載します。例えば: “We have presented a subset of our findings [at 学会など]/ [as 出版物など ] in [位置] in [年度].”
例: We have since expanded the scope of our research to contemplate international feasibility and acquired additional data that has helped us to develop a new understanding of geographical influences.
[段落 5: 査読者について] 査読がある場合、研究に対し客観的な評価ができるだけのバックグラウンドを持った査読者を提案することができます。
- [名前、所属機関、Eメールアドレス、専門分野]
- [名前、所属機関、Eメールアドレス、専門分野]
- [名前、所属機関、Eメールアドレス、専門分野]…
上で希望する査読者は、金銭的あるいはその他の利害関係が伴ってはいけません。
TIP: ジャーナルは論文著者が提案した査読者のうち少なくとも一人は査読者として任命するのが原則であるため、3~5人の希望査読者を記載しておきましょう。
TIP: 文中で使われている用語は全てターゲットジャーナルが使用しているもの(“reviewer”・“refree”など)に合わせます。カバーレターでの細かい用語使用まで徹底的にジャーナルに合わせることで、投稿者がターゲットジャーナルについて熟知しており、投稿論文もきちんとジャーナルの規定に合わせたものであることを示すことができます。
[段落 6: よく追加されるフレーズ] Each named author has substantially contributed to conducting the underlying research and drafting this manuscript. Additionally, to the best of our knowledge, the named authors have no conflict of interest, financial or otherwise.
Sincerely,
[名前]
送り主の名前
職位
所属機関
[所属機関の所在地]
[Eメールアドレス]
[電話番号: (国番号・市外局番含む)]
[FAX: (国番号・市外局番含む)]
追加連絡先 [連絡担当者に連絡がつかない場合]
所属機関
[所属機関の所在地]
[Eメールアドレス]
[電話番号: (国番号・市外局番含む)]
[FAX: (国番号・市外局番含む)]
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