伝わる学会発表の考え方

学会発表

学会発表に至るまでには、かなりの時間をかけて研究の構想を練り,データを収集し、それらの結果を分析する作業があります。

学会発表では、聴衆に対して限られた時間内に、重要な結果を理解してもらわねばなりません。このとき、研究内容を正確に知っているのは、研究に関わった人達だけです。

つまり、ほとんどの聴衆は、何をどこまで明確にした発表なのかを詳しくは知らないので、分かりやすく説得力ある発表を行うように心がけることが重要です。

そのためには、短い発表時間内に、聴衆とうまくコミュニケーションがとれるような、工夫した発表をする必要があります。

伝わる学会発表の考え方

発表(報告)内容は1つに絞る

発表(報告)内容は、多くて2つ、出来れば1つの目的に対して発表すること

研究を進めていくと、思いがけない発見や新たな知見と出会うことが多々あると思います。目的とする結果を得るために、複数実験を行い多角的な情報を提示した方が、説得力が増すと思ってしまいます。

しかしながら、これらすべての情報を伝えるためには、どのくらいの時間が必要でしょうか。

特に学会発表は時間との戦いです。10分程度の間にあなたは、研究の背景から目的、方法を説明し、得られた結果から解析したデータを用いて考察、結語と論理を展開する必要があります。

伝わらない学会発表に、内容を多く詰め込み過ぎて何を言っているかわかない場面に出くわすことがしばしばあります。発表している内容は面白いのですが、検討項目を詰め込み過ぎて、初見の聴衆たちがついて行けないことがあります。

ここであなた自身が作成した発表(報告)スライドが、2つ以上の目的を述べていないか振り返ってください。

文字は少なくできるだけシンプルに

学会発表スライド内の文字ではなく視覚的(画像や短文)で表現する。

口述原稿とスライドに表示されている文章が同じ場合や方法を細かく文章にして提示する必要はありません。聴衆はあなたのアイデアを聞きに来ていることを忘れないようにしましょう。

下記の2つのスライド内容は同じことを述べています。スライドAは口述でのべるべき背景もスライドに表示しています。

それに対してスライドBは目的、実施したい研究内容を表示しています。どちらのスライドが学会発表時に見やすいと感じるでしょうか?

スライドはあくまでも発表の補助をする役割です。演者の言葉の手助けにすぎないことを考えて思い出してください。

スライドA
スライドB

視覚によるストーリーテリング

Search Engine Journalのコラム「視覚によるストーリーテリング」(原題:Visual Storytelling: Why Data Visualization is a Content Marketing Fairytale)にヒントがありそうだ。

このコラムによれば「平均的な読者は1ページの単語総数のうち28%しか読んでおらず、文章にすると、2~3行程度にとどまる。それでは、伝えたいストーリーが伝わらない。内容が素晴らしいだけでは不十分で、内容を確実に伝達するためには、視覚化することが重要だ」と述べている。

その理由は次の通り。

「本来、脳は視覚処理に優れており、画像の内容を瞬時に理解できる能力を持っているが、文字情報が多くなると、脳が疲れてしまう。そのため脳は処理が楽で理解しやすい画像を文字よりも好む傾向がある。また、視覚による情報伝達は、自己の経験として取り込みやすく、そのストーリーを人に伝えやすい」。

視覚による伝達の重要性をそう解説している。

学会発表時に1つのスライドが聴衆の目に触れる時間は、せいぜい数十秒です。

したがって、スライドには、要点だけを簡潔に書いておかねばなりません。

1枚のスライドに、小さな文字で多くの事を書くことは、絶対に避けてください。特に、すべての要約や結論をスライドに長々と記述することは不必要です。会場では、何十メートルも後ろから、あなたのスライドを注目している人がいることを忘れないでください。

目安として、スライドに書き込む行数は8行以内、1行あたりの文字数は20字程度、文字の大きさは、28ポイント以上を奨めます(字は太く、大きすぎると感じるぐらいがよい)。

また、出来上がったスライドを手を伸ばした状態で読んで見て、字が読めないようだと、そのスライドの文字は小さすぎます。

伝わるスライド構成について

型をおぼえる「背景、目的、方法、結果、考察、結語」

学会発表には伝えないと行けないことが決まっている。それは「背景、目的、方法、結果、考察、結語」の6項目です。

これら1つが欠けるだけでも、聴衆はあなたの学会発表について行けなくなる。短い口述発表時間の中でこれら6項目を順序立てて述べることで、研究目的や方法、結果、そこから導き出された考察、結語とキレのあるストーリー展開を示すことで伝わる口述発表が行えます。

項目スライド(枚数)必要時間(分)
表題10
背景33
目的10.5
方法21
結果2 〜 31
考察2 〜 32
結語0.5
合計12 〜 157
スライド枚数と必要口述時間

背景や目的を明確に説明

あなたの研究内容は、多くの聴衆にとっては初めて聞く内容です。

そこで、聴衆にとって理解しやすい発表とするためには、「研究の背景について簡単に触れる」、「研究目的を明確に示す」ことが重要です。

これらの説明に、全体の発表時間の約1/3の時間を割りあてても多すぎることはありません。

また、研究の背景と目的を分かりやすく話すことによって、多くの聴衆の注意力を、あなたの発表に強く引きつけることになります。

方法や結果は事実だけを述べる

あなたが実験を行った方法や結果を正確に記載してください。

正確に記載することは、あなたがスライドに示した方法を、聴衆が再実験を行えば、今回同様の結果を得れることを示します。

いま一度、作成したスライドを見直してください。提示した内容、方法で再実験は可能でしょうか?

また、結果に関しても、あなたが行った実験方法から得られた結果のみを正確に記載することを心がけてください。ここでは、想像やあなたの考え方は必要ないことを再度認識してください。

学会発表を成功させるためには

発表原稿を作ろう。

限れた時間内に、研究内容を的確に伝えるためには、あらかじめ充分なリハーサルを行っておくべきです。

そのためには、発表原稿の作成が重要です。10分程度の口述発表ならA4が2枚程度くらいなると思います。

発表原稿を作成することによって、スライドの内容も吟味され、より伝わりやすいスライドに変化していきます。

発表練習は100回行えば、本番は怖くない

発表の経験の少ない方は、何度もくり返してリハーサルを行うことが役に立ちます。リハーサルでは、共同研究者だけでなく、研究に直接関与していなかった人にも聞いてもらうと、どの程度分かりやすい発表であったかを知る目安になります。

また、リハーサルを録音して、自分で聞くことにより客観的な判断材料になります。聞いてくれる人がいなくても、声を出して練習することは大変役に立ちます。実際、Capa自身も、モニターに向かってでしばしば声を出して練習しています。

聞いている人にとって説得力のある発表は、原稿を読むのではなく、充分にリハーサルを行った口述による発表です。

発表内容の要点は、スライドの中に、キーワードとして盛り込んでおけば、たとえ原稿がなくても、重要な内容を言い忘れることはありません。また、早口にならず、ゆっくりと大きな声で話すようにしましょう。

原稿なしで発表するためには、100回練習を行えば、スラスラと言葉が出てくるようになります。そのような発表をくり返していれば、そのうちに原稿なしで発表する技術が身につきます。

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