学術論文中に他人の著作物から得た情報を記す場合は、該当する情報が引用・参照であることを本文中に示し、かつ論文の最後に参考文献としてリスト化する必要があります。
目次
なぜ引用するのか?
学術論文は、“学問”の一部です。そして、学問が発展するためには、“新しいこと”が過去のことに付け加えられる必要があります。
しかし、勉強や情報収集の場合には、論文執筆時に引用が正しく行われていない場合あります。
このよう場合、他の人からは「この人は勉強していないな」、「この人はおんなじことを繰り返しているだけだ!」などという評価を受けてしまい、せっかくの努力が無駄になってしまいます。
また、あなたの論文やレポートを読んだ人が「おぉ、これは面白い!」と思っても、それが誰から触発されたアイデアなのか、あるいは、これから先に進むには何を勉強すればいいのか、分からないこともあります。
“引用”は、過去の“学問”の成果を受けたものであることを示す手段として、有効なものです。
参考文献の引用の仕方 3種類
1.本文中に記載する
論文の本文中に、引用文献があることを示す数字か、または引用文献の情報を括弧で記載します。この表記方法は学会や学術雑誌によっては異なるので投稿する雑誌の投稿規定を確認することが大切です。
一般的に参考文献の数字や著者名を本文中に記載します。最終的に、参考文献のリストは、論文末尾に、数字順またはアルファベット順に掲載します。
- 放射線誘発白内障のしきい値線量が大幅に低減された(3)(本文中には数字のみ記載する)。
- 放射線誘発白内障のしきい値線量が大幅に低減された(ICRP,2014)。(本文中に著者名と発表年まで記載する)
最初の例は、アメリカ医師会のスタイルガイド(AMA Manual of Style)によるものであり、2番目の例は、アメリカ心理学会(APA Style)によるものです。
2.文末脚注(エンドノート)に記載する
「本文中に記載する」と似ていますが、注釈をつける個所の本文中に数字を括弧書きで記載する方法です。この数字を、論文末尾の参考文献リストの番号と対応させます。
3.脚注(フットノート)に記載する
エンドノートと同様に本文中に数字を記載する方法ですが、参考文献リストを論文末尾にまとめるのではなく、個々の引用を記入したページの下段に記載される点が異なります。
学術ジャーナルに論文を掲載する場合、各誌が定める著者のためのガイドライン(Instructions for authors、投稿規程)を参照する必要があります。
また、ジャーナルによっては、AMA(アメリカ医師会)、EJR(ヨーロッパ放射線学会)、RPD(放射線防護測定)などの学会や出版社も、論文執筆者向けに書き方のスタイルを提供しています。
引用のルール
参考文献を記載することは、研究経緯と論拠を示すことです。
参考文献を明記することによって、読者は提示された情報が正当なものであることを確認でき、結果として該当論文への信頼の構築につながります。
とはいえ、論文執筆に利用したすべての情報を参考文献に記載する必要はありません。すべてやろうと思えば、途方もない時間がかかります。
しかし、どんな場合に参考文献を記載すべきかは知っておく必要があります。対象には、ニュース番組やウェブサイト、TVやラジオ番組を含め、すべての情報源が当てはまります
1.直接引用
直接引用とは、一言一句を文章を写すことです。
直接引用には参考文献の掲示が必ず必要です。それが、たとえ単語であっても、引用した語句であれば引用符を付けなければなりません。数行にわたる引用の場合、本文とは明確に区別できるように執筆します。
引用した場所には『』や“”を用いてその文章を囲みます。
2.間接引用
間接引用とは、他者の考えを自分の言葉に置き換えて書くことです。
この場合でも、他者の考えから着想した以上は、参考文献の掲示が必要です。また、引用するにあたっては、専門用語を読者にとってわかりやすい言葉に置き換えることも大切です。
3.要約
要約は間接引用の一種ですが、違いは、主要点のみを短く述べることです。
もちろん、これにも参考文献を表示する必要があります。
4.常識
広く一般に知られていることは、それが統計上の情報または研究上の情報でない限り、参考文献を示す必要はありません。不要な例:「日本の首都は東京です。」
必要な例:「日本の首都は、東京で、日本で最もCOVID-19の感染者が多い都市です。」
東京が日本の首都であることは一般常識ですが、COVID-19が日本で最も多く罹患している都市であることは、統計上の情報です。この事実には参考文献を付すべきです。
5.追加情報
結論部分や他の部分で、それ以前に同じ参考文献から同じ内容の記述を引用した旨を一度でも記載したのであれば、再び記載する必要はありません。
しかし前述の引用記載とは異なる情報を紹介したり、別の内容を追加したりする場合には、あらためて記載しなければなりません。
学位論文
博士課程の院生に多い誤りは、自分自身の学位論文(一般的には未公開である修論ではなくて、国立国会図書館に献本される博論のことを指します)の図や表に、自分が投稿して学術誌に掲載された図や表がそのまま断り無く用いられることも立派な盗用(二重投稿)です。
多くの場合、学位論文の一部を投稿論文にしているため分量的には10から20くらいです。
研究をしっかり実施している場合は、投稿論文とは異なる図表を、学位論文用に新たに書き下ろすことはさほど難しいことではないはずです。
ここで、いかさまをして自身の投稿論文の図表をそのまま学位論文に掲載してしまうと、二重投稿に該当します。
逆に学位論文に掲載した図表は、学術誌への投稿に用いれば明らかなな二重投稿となりますので、しっかり投稿用と学位論文用を長い目でコントロールしないと墓穴を掘りますので注意が必要です。
間違った引用は身を滅ぼす
盗用・剽窃は重大な不正行為です。
発覚すれば、論文を掲載したジャーナルが出版された後であっても撤回を余儀なくされます。著者の所属機関によっては懲戒処分となることもありますし、研究者としての評価は確実に下がってしまいます。
学術機関・学会・出版社によって、参考文献の表示ルールが異なっている場合があるため、注意が必要です。
論文を書く際は、まず自身の属する機関のルールを習得しておくこと、さらに論文投稿先の投稿規定を厳守することが必要です。
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